物流、自動車、家電、OA機器
剥離紙のない両面使えるOAラベル
糊のはみ出しのないプリンター印字を実現
国内自動車メーカー
自動車・開発・製造・販売
剥離紙のないラベルと言えば、環境に優しく、剥離紙廃棄の手間がないため、物流用荷札などで使用されていますが、プリンターで印字が可能で剥離紙のないOAラベル製品が作れることをご存知ですか?今回、高熱が掛かるプリンターで印字しても糊のはみ出しがほとんど発生せず、両面印字が可能で剥離紙のないラベルの製品化に成功しました。
事例のポイント
- 糊のはみ出しを抑制した他社にない粘着加工技術
- 剥離紙のないラベルの豊富な加工経験による開発スピード
- 専用機での加工による安定した製品加工技術
王子グループ 機能材カンパニーが選ばれた理由
- プリンター印字による糊のはみ出しを抑制した製品化の実現
- 剥離紙のないラベルの豊富な製品群
- 自社加工による安心感
お客様の課題・開発の背景について
お客様の課題である剥離紙のない両面OAラベルの糊のはみ出しによる印字搬送トラブルを、他社にない製品開発力と製造技術力でスピーディーに解決しました。
ある展示会で弊社の剥離紙のないラベル(弊社商標名セパフリー)をご覧になったプリンターメーカー様から、プリンターを採用してもらっている自動車メーカー様で、糊のはみ出しで搬送トラブルがあり困っているとの相談を受けました。製品は、剥離紙のない両面印字可能なOAラベルで、剥離紙がないため粘着剤とシリコーンを交互に塗工し、貼り合せてラベル用紙にしていますが、糊流れ方向のエッジまで粘着剤が施されているため、搬送ロールや感光ドラムに糊が付着し、搬送トラブルになっている状況でした。そこで、エッジの糊をなくすことが出来ないかと相談があり、他の製品でエッジ部分の糊をなくした製品があることを説明したところ、本製品で開発してほしいとのご依頼がありました。是非、お客様のご要望にお答えしたいとの思いで製品化に取り組みました。
開発中に苦労したことについて
OAプリンターの高温による糊のはみ出し解消実現に向けて、最適な材料設計のノウハウ、粘着加工技術を生かし、搬送トラブル解決を追求します。
『OAラベル』とは、ご存知のとおり、レーザープリンターや複合機で印字して、DMや荷札の宛名や表示用として使用するラベルのことです。レーザープリンター等では帯電された感光ドラムにレーザー等の光源を照射し、その部位の電圧を変化させることで感光体に照射された部分にトナーが静電気の力で付着、その後、転着ロールから熱と圧力で用紙にトナーを定着させます。この熱がやっかいで160~200℃とかなり高温のため、ラベルの粘着剤が熱により柔らかくなり、圧が加わることで糊のはみ出しによる搬送トラブルが起きやすくなる問題があります。まさに、プリンターをご使用の自動車メーカー様では、糊のはみ出しによる搬送トラブルで、また、そのプリンターを納めているプリンターメーカー様では搬送ロールや感光ドラムに付着した糊や紙粉を除去するメンテナンスの回数が増えることの問題を抱えられていました。
今回の製品は、お客様の仕様で両面を印字できて剥離紙のないラベルになります。剥離紙のない仕様のため、粘着剤とシリコーンをストライプ状に交互に配し、貼り合せることでラベルにするのですが、弊社では物流用荷札で長年の実績があり、最近では流通の在庫管理用途や家庭用のゴミを出す時にゴミの種類で違反して収集不可のものに貼るゴミ警告ラベルなど、多くの種類の剥離紙のないラベルを取り扱っています。ただ、今回の印字する用途のラベルの製品は実績がなく、まずはプリンターに適した材料の選定に取り掛かりました。
OAプリンターに適した基材は、通常の剥離紙のある片面印字のラベルで実績があり、シリコーンも現行製品で実績があるものを使用できる目処は立っていましたが、一番の課題は粘着剤でした。お客様ご要望のエッジ部の糊をなくすためには、連続で塗工している粘着剤を途中で止める(粘着剤をコーターヘッドから出なくする)必要があります。今回の粘着剤は合成ゴム系のホットメルト型粘着剤になりますが、粘着剤は固いほうが粘着剤の吐出を止めた時に切れが良くなり、部分的に糊をなくす時にはいいのですが、反対にストライプ状に塗工する時は固いと安定したストライプ形状にならず、糊飛びが発生しやすくなります。つまり、ある程度の流動性(柔らかさ)が必要になります。さらに、自動車メーカー様から、金属製部品を包装する時に錆を防止するため防錆袋を使用しているため、その防錆袋への粘着性が必要とのご要望がありました。この防錆袋は表面を油系のコーティング剤処理をしているとのことで、粘着性が弱くなる要因になります。これにより、粘着剤のストライプ塗工適性、糊無なし部の糊切れ性、防錆袋への粘着性を考慮し、バランスが取れたホットメルト型粘着剤の選定が必要になり、これが一番高いハードルでした。
まずは、防錆袋への粘着適正を見極めるため、低温環境、常温環境、高温環境で防錆袋の粘着力を確認しました。粘着剤が合成ゴム系のため、一般的には低温では固めになり、高温では柔らかくなるため、常温以上では問題なく粘着性があるのですが、低温でジッピングしながらの界面剥離が発生し被着体に対する密着が悪い傾向にありました。そこで、低温域での貯蔵弾性率の設計を見直し、再設計した低温での柔らかさを保つため粘着剤を試したところ、ジッピングもなく常温帯と同等の粘着力が確認できました。次にストライプと糊なしの加工適性ですが選定した粘着剤が柔らかめだったためストライプ適性に問題はありませんでした。ただ、糊なし部を作るための粘着剤の吐出を止めた時に糊切れが悪くなり、糊なし箇所に糸を引いたような糊残りの現象が発生しました。これでは完全な糊なしではなく、エッジに多少なりとも糊が残るため、改善に取り掛かりました。工場の製造と相談していろいろ試したところ、機械調整をすることで糊切れが良くなる条件を見出すことに成功しました。
今回、もう一つのお客様のご要望が製品のシート形状でした。通常、プリンターに通すシートはA4が多いのですが、現行品ではA4サイズより一回り大きいため、プリンター設定がしにくく使い勝手が悪いものでした。そこで、OA用紙を両面貼り合せたあと、A4サイズでシートカットできるように貼り合せ位置、糊やシリコーンの塗布位置を設計してA4サイズずばりで仕上がるように加工しました。仕上がった製品をプリンターメーカー様に確認いただきましたが、プリンターでの糊、紙粉の付着が少ないため搬送トラブルやメンテナンスの低減が図れると良好な評価でした。また、自動車メーカー様の現場の方からは、プリンターの搬送トラブルの低減以上に、A4サイズになったため、設定がやりやすく、使い勝手が良くなったとの喜びのお言葉をいただきました。
開発の成果について
自社内加工による一貫生産技術と営業・開発・製造が一体になることで、お客様の課題、悩みをより身近に、よりスピーディーに解決します
剥離紙のない製品の豊富なラインアップと開発経験による技術、自社内加工による一貫生産の製造技術が一緒になって、お客様ご要望の糊のはみ出しのないセパなしOA製品の開発に成功しました。開発から製造・販売までが1つのグループ内にあることでお客様の課題、悩みに対する抜本的対策をスピーディーに打てたのだと思います。また、営業がお客様と直接コミュニケーションを取っているため、お客様のニーズ、要求品質を的確に捉え、開発、製造に伝えることで、製品化を確実に、しかも短期間で行うことができました。
これからもお客様、営業、開発、製造の間の距離感を極力なくし、一体となってお客様の課題や悩みを解決することを大切にしていきます。
今後の展開ついて
剥離紙のないラベルは環境に配慮した将来性のある製品です。弊社では豊富な開発経験と製品実績を生かして、お客様の様々なアイデア、ご要望を形にしていきます。まずはご相談ください
剥離紙のないラベル製品は、昨今の環境問題で市場の発展が見込まれる将来性のある製品です。これからも、こんな場面で使われているラベルをセパなしにしたい、こんな材料でセパなし製品を作りたいという声に答えていきたいと考えています。
当社では紙やフィルムなどの材料を使った粘着原紙、そのラベル加工を社内で一貫生産しています。様々な粘着原紙や加工品においても営業、開発、製造が一体となって小ロットからお客様のご要望やアイデアを形にして、課題、悩みの解決にお応えしていきます。
事例に関するお問い合わせ
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