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食品・衛生業界向け/建築・機械業界向け開発ストーリー

世界で最初に
パルプエアレイド製法を確立

1960年に、製紙会社の木材パルプの知識を活かし、紙とは全く異なる嵩高で、ボリューム感のあるシートを開発できないかと考え、シート形成に水を使用しない、全く新しい製法の検討を始めました。製造設備の設計から自社で行い、1965年にパイロットマシンを完成させ、エアレイド製法の基本製法を確立させました。
ちょうどこの検討を行っているときに、アセテートフィルターに替わる煙草フィルターの公募があり、この新しい製法で作った不織布(エアレイド不織布)を提案し、お客様と製法を含めた開発を行い、1966年に世界で最初にエアレイド不織布の商業生産を開始いたしました。
その後、クッキングペーパーにも採用され、クッキングペーパーの普及に伴い、エアレイド不織布の知名度も上がり、現在では衛生材料、オシボリ、化粧用パフ、フェイスマスクなど多くの商品に採用していただいております。

事例のポイント

  • 紙の製造技術を使って、木材パルプを使った全く新しい不織布製法を確立
  • タイムリーなたばこフィルターの案件で品質確立
  • クッキングペーパーへの採用で知名度が上がり、他の案件へ展開

王子グループ 機能材カンパニーが選ばれた理由

  • お客様の要求に応えられる、製紙で培った技術力
  • 水を使わないから材料選択が自由自在
  • 厚さ・形も自由自在

お客様の課題・開発の背景について

最初はボリュームのあるパルプエアーレイド不織布の追求

王子キノクロス株式会社 開発研究所 矢倉主席技師

紙は木材パルプを主原料としており、その種類は新聞用紙をはじめとして、コピー用紙、グラシン紙、段ボール原紙、表面をコーティングした印刷用紙、感熱紙、インクジェット用紙など様々で、常に新しいものの検討を行っていますが、紙の基本的な製造方法は同じであるため、クッション性や吸液性を付与するためにボリューム感を持たせるには限界がありました。

王子キノクロス株式会社 営業部 貴田副部長

また、紙の製造工程(木材パルプを水に分散させた後、網の上に流し込み脱水し、木材パルプをシート化する工程)においては大量の水が使用され、シートを乾燥して紙を仕上げるために多くのエネルギーが必要であり、そのため少しでも水の使用量を減らしたいという課題がありました。
そこで、木材パルプをシート化する工程で水を全く使用しない製法であれば、紙と同じ木材パルプを主原料としてもエネルギーが大幅に削減でき、かつボリューム感を持たせることができるのではないかという発想から誕生したのがパルプエアレイド製法です。

開発中に苦労したことについて

フォーミング装置からスプレー装置まで自社設計したオリジナルな製造設備だから、ボリューム感に優れたパルプエアレイド不織布が作れます

一本一本にほぐ解したパルプ繊維を篩のような細かな網目を通して降らせると、雪が積もったようにボリューム感を持たせることができます。
このままではバラバラになるため、バインダーをスプレーして、繊維を固着させればシート形状を維持することができるというのが、エアレイド製法の基本的なコンセプトです。

紙を製造する抄紙マシンをベースに検討を開始しましたが、シート形成に水を使用しないために数多くの新規設計が必要でした。
原料のパルプシートをパルプ繊維一本一本にほぐす装置(解繊装置)、ほぐしたパルプ繊維をエアーで送る装置、パルプ繊維を幅方向均一に排出する装置(フォーミング装置)など全て独自で設計した装置ですが、ボリューム感を持たせ少ないエネルギーで製造するためには繊維を結合させるバインダーのスプレーが重要なポイントとなります。
バインダーのスプレー量を多くすればするほどパルプ繊維の脱落が抑制され、シート強度も強くなりますが、ボリューム感が減り、乾燥のためのエネルギーも必要となってきます。

パルプ繊維をドライ条件で均一に分散できることが、私たちのキー技術の一つです

このことを解決するために少ないスプレー量で、ボリューム感を維持してシート強度を持たせる方法を検討しました。シート強度を持たせるためにはシート内に出来るだけ均一にバインダーがスプレーされなければなりませんが、片面からのみだけスプレーするとスプレーの圧力を上げる、バインダー量を増やすという言うことをしないとバインダーが反対面まで浸透しないため、反対面の強度が弱くなります。
そこで、両面にバインダーをスプレーする方式を検討しました。幅方向に均一にスプレーでき、スプレーの圧力でボリューム感を損なわない既存スプレー装置を選定し、品質面では合格レベルに達しましたが、少しでも良いものを安定して作りたいという拘りからスプレー装置までも自社で設計してしまいました。
この他にも製造設備、製造条件の確立は苦労の連続でしたが、チャレンジ精神と世の中にない無い製法を完成させたいという信念でこのパルプエアレイド製法を完成させました。

開発の成果について

我々はパルプエアレイド不織布の製法、製造設備までも開発した豊富なノウハウを駆使して、自由自在臨機応変な製品開発を行います

製造設備も自社開発品です

今では多くのパルプエアレイド不織布のメーカーがありますが、製造設備は機械メーカーが設計したものを購入されています。我々は製紙メーカーでありながら、パルプエアレイド不織布の製法、製造設備までも開発し、生産を通じて更なる設備の改良、製造におけるノウハウを蓄積し、今日に至っておりますので、どのメーカーよりもパルプエアレイド不織布に関して熟知していると自負しております。
また、新しいものを開発するチャレンジ精神も代々引き継がれており、お客様の要望に沿った自由自在な製品開発が出来ると信じております。

今後の展開ついて

他の素材と複合化して、新しい機能を発揮する製品を開発していきます

最初は大きなロールでしたが、最終製品はみなさんの身近にあるんです

先に述べた製造設備以外に、他の素材と複合したエアレイド不織布が製造できる設備も保有しております。
クッキングペーパー、オシボリ、衛生材料、化粧品用途以外に揮散体、廃液吸収体などの用途にお使いいただいていますが、まだまだ未開拓の分野があると思います。液体の吸収性、ソフト感、嵩高性、高米坪、吸音性、機能性粉体配合による消臭・防カビ・抗菌などの機能性付与など、多くの機能を生かして新たな分野へ挑戦していきたいと考えております。

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掲載しきれなかった事例もございます。また、共同開発などのご相談もお気軽にお問い合わせください。

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